ダイナミックシール

公開トピックです。
装置担当者含む、液体ヘリウムユーザー向けに情報をまとめているところです。

概要

ダイナミックシール[1][2] は、トランスファーチューブと液体ヘリウム容器の接続に使う密閉シールです。

ウィルソンシール[3][4] と比較して

  • トランスファーチューブと容器間を密閉したまま抜き差しでき、ねじの開閉操作が不要
  • トランスファーチューブ抜き差しの際にOリングが破損・脱落しにくい

という特徴があります。

写真:
ダイナミックシール3
ダイナミックシール
ウィルソンシール

構造

多くはテフロン製で、円筒の内側に切ってある直角の溝にOリングを2つセットし、テーパー部分を(シリコン)ゴムチューブに差して使用します。
この直角の溝がミソで、上下左右の4点がOリングに接触することで、固定と気密性を保っています。[2:1]
持ち手部分の外周にローレットや横溝が切ってあると上下移動操作がしやすくなります。

使用例

参考動画(分子科学研究所Youtube)
SQUID ヘリウム充填方法
ESR 液体ヘリウム温度の測定

テーパー部分をゴムチューブに差し込むだけで密閉でき、そのままトランスファーチューブを差し込みできるので、操作が簡単です。

使用時の注意

  • 液体ヘリウム容器ヘッドに(シリコン)ゴムチューブを接続する加工が必要。[5]

  • ゴムチューブへの差し込みが甘いと、容器の内圧が上昇したとき安全弁より低圧であっても栓が吹き飛ぶことがある。

  • トランスファーチューブが自重で沈み込むため、浮かせた状態で止めておきたい場合は、クリップやストッパー等を使って支える。

  • トランスファーチューブを引き上げる際、Oリングが凍ると引き上げられなくなる。

ウィルソンシール接続型ダイナミックシール

文献[1:1][2:2]では、ウィルソンシールに接続できるタイプのダイナミックシールも考案されています。

どなたか使ったことはありますか?
ご存じの方は情報提供いただけるとありがたいです。


  1. Kato K. and Suzui M., Review of Scientific Instruments, 61 7, 2004-2005, 1990 ↩︎ ↩︎

  2. 加藤清則 他、高エネルギー物理学研究所技術研究会 (1986)
    技術研究会報告集データベース (要ログイン) ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 宗本久弥、総合技術研究会2019九州大学 (2019)
    技術研究会報告集データベース (要ログイン)
    ウィルソンシール? (琉球大学 極低温施設) ↩︎

  4. ウィルソンシールの構造と注意点について (東京大学 物性研究所 低温液化室) ↩︎

  5. 液体ヘリウム容器の加工は、あらかじめ各施設の寒剤担当者にご相談ください。 ↩︎

ウィルソンシール接続型ダイナミックシール

高山さんが現物を発見してくれました!
(相手のウィルソンシールは見つからず)

トランスファーチューブ12mm用、栓と液面計測用?のアダプター付き

ウィルソンシール用ダイナミックシール

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