溶液熱分析 等温滴定型カロリメーター(ITC)での有機溶媒の使用

ITCは生体分子の測定に特化した仕様になっているため、通常は緩衝液等の水溶液を使用しますが、有機溶媒(メタノール)でもうまく測定できました(ユーザーさんが)ので、記録します。

・使用した機器:マルバーン製 MicroCal iTC200 等温滴定型カロリメーター

<メタノール溶媒を使用した測定 メモ>

・使用した有機溶媒:100%メタノール
・溶媒の前処理(〇):脱気されたメタノールを購入し封を開けて数日以内に使用←簡単
・溶媒の前処理(△):モレキュラーシーブを試したが、手間が増えるだけであまり良くない
・サンプル調整:余計な溶媒・添加剤を混入させない、脱気しない、調整後はすぐに測定
・サンプル充填前の準備:ガスタイトシリンジ・セル・PCRチューブ・滴定シリンジはメタノールでよくすすぐ(わずかな水と混合しても発熱して測定不能になる)
・サンプル充填:リガンド側は念のため手動で行う
・回転数:500-750rpm(ベースラインノイズを見ながら調整)
・DP:リファレンス側が水→Dpは3uCal/sec程度(Acetalの耐溶剤性が不安だったため、水のままで測定)
・洗浄:洗浄モジュールは使用できない(耐溶剤性がない部品あり)ため手動で洗浄
・注意点:有機溶媒を入れたまま放置しない、耐溶剤性のない部品が多いので注意
・解析:水溶液と同様に熱量を算出できる

また、極性の低い溶媒が使用できれば可能性が広がるかと思い、トルエンも試行してみました。(→今のところ難しいです。)

<トルエンでの試行 メモ>

・試行してみたものの・・揮発性・引火性が高すぎてコントロールのみ行って断念、コントロール測定結果は良好
・注意点:メタノールより耐溶剤性のない部品が多い、専用ガスタイトシリンジ(樹脂被覆あり)・PCRチューブも不可
・サンプル充填方法:水⇔メタノール⇔トルエン、3種が混ざると白濁するので念入りに置換する

<その他の有機溶媒>

・メーカー資料にはエタノール、アセトニトリルがあるが耐溶剤性が心配で試していない

以上となります。

分子研 機器センターには2台のITC(前述のiTC200と、2021年に納品したPEAQ-ITC)があります。
新しいPEAQ-ITCではさすがにチャレンジできないので、壊れかけのiTC200で試行しました。